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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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クローン病

どんな病気?

 クローン病は消化管に炎症を生じ、下痢、腹痛や発熱などのさまざまな症状をきたす病気です。貧血、体重減少などの全身症状が主な訴えであることも少なくありません。また肛門の周囲に痔ろうや膿瘍(炎症による膿がたまったもの)で発見されることもあります。消化管の中でも特に小腸や大腸に病気が起こりやすく、最も病気の頻度が高いのは小腸の末端から大腸につながる部分(回盲部)です。炎症により、管腔が狭くなること(狭窄)、腸の壁に穴が開いてしまうこと(穿孔や瘻孔)が生じることがあります。その他、口内炎、関節炎、皮膚、眼の症状(腸管外合併症)を生じることもあります。はっきりとした原因はまだ明らかではありませんが、遺伝的な背景に加え、食事や腸内細菌などの環境的な要因などにより、免疫機能の異常が生じ、病気が発症、持続すると考えられています。日本国内のクローン病の患者数は年々増加しており、現在は約4万人以上の患者さんがいると推定されています。10歳代から20歳代に発症する患者さんが多くみられます。

検査は?

 患者さんの症状や血液検査の異常からクローン病が疑われた場合には、診断のためにさまざまな画像検査が必要となります。腸管の状態を把握するために内視鏡検査と造影検査が行われます。内視鏡検査では、上部消化管内視鏡検査(いわゆる「胃カメラ」)、大腸内視鏡検査に加え、小腸内視鏡検査やカプセル内視鏡検査なども検討されます。また小腸全体を調べる検査として小腸造影検査も行われます。内視鏡検査の際には必要に応じて粘膜の一部を採取する検査(生検)を行い、病理診断も行います。また腸管だけではなく腸管外も検査するために、超音波検査、CT検査、MRI検査などを適宜組み合わせて行います。

治療は?

 クローン病の治療においては内科治療(薬物治療や栄養療法)と外科治療(手術)があります。内科治療が主体となり、薬物治療として、5-ASA製剤が最初の治療選択肢として広く用いられています。また、栄養療法として経腸栄養(刺激が少なく、脂肪分の少ない栄養剤の内服)が行われます。5-ASA製剤や栄養療法にて症状改善ができない場合には副腎皮質ステロイドの投与を検討します。さらに、再燃予防のためには免疫調節薬(アザチオプリン[イムランなど])も用いられます。また肛門病変には抗生物質を使用する場合もあります。これらの治療で十分な効果が得られない場合には、下記のような生物製剤(特定のタンパク質に向けた抗体)の使用が検討されます。詳細については担当医にご確認ください。また薬物治療以外の治療法として血球成分除去療法を施行する場合もあります。

2019年8月現在、わが国でクローン病に対する保険診療が可能な生物製剤

  1. 抗TNF-α抗体製剤:レミケード®、ヒュミラ®
  2. 抗IL-12/23p40抗体製剤:ステラーラ®
  3. 抗α4β7インテグリン阻害剤:エンタイビオ®


 腸管の狭窄(腸閉塞に至るもの、内視鏡で拡張できないもの)や穿孔・瘻孔、腹腔内の膿瘍などの合併症が発生した際には外科治療が必要となります。経口での食事が困難な場合には全静脈栄養(すべての栄養を太い静脈に入れた管から点滴する)を一時的に行います。近年では、粘膜の炎症を完全に抑えること(粘膜的寛解)が治療目標であり、自覚症状が改善されていても定期的な検査が必要と考えられています。

担当医からの一言

 クローン病の診断、治療方法は日々進歩しています。お悩みやご心配なことがあれば担当医にご相談ください。




大腸内視鏡検査では腸管の流れと同じ縦方向に走る潰瘍が特徴的です。


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