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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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ベーチェット病

どんな病気?

 ベーチェット病は、1937年にトルコの皮膚科医のHulusi Behçet医師によって提唱された疾患で、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍(口内炎)、眼症状、皮膚症状、外陰部潰瘍を4主徴候とする原因不明の難治性全身炎症性疾患です。副症状として、回盲部潰瘍で代表される消化器病変、関節炎、血管病変、精巣上体炎、中枢神経症状があります。症状には、活動期(症状が出現している時期)と非活動期(症状がない時期)があり、再燃と寛解を繰り返す経過を辿ります。平成26年時点での本邦の特定疾患医療受給者数は20,035人で緩やかに増加傾向にあります。疫学的には地中海沿岸、中央アジア、日本に至る東アジア地域一帯、いわゆるシルクロードに沿って発症率が高く、欧米では少ないとされています。原因はまだ解明されておりませんが、遺伝的要因(特にHLA-B51)と環境要因の関与が考えられています。本邦では厚生労働省ベーチェット病診断基準に基づいて診断を行い、症状の組み合わせにより、完全型、不完全型、疑いと分類されます。また重篤な状態をきたす可能性がある特殊病型として、腸管型、神経型、血管型があります。このうち、消化器内科では腸管型ベーチェット病の診療を主に担当いたします。

腸管型ベーチェット病とは?

 ベーチェット病研究班診断基準で完全型もしくは不全型ベーチェット病と診断された患者さんのうち、回盲部(小腸と大腸がつながる部分)に円形あるいは類円形の深掘れ潰瘍を認め、さらに臨床症状や内視鏡検査で他の疾患(虫垂炎、感染性腸炎、腸結核、クローン病、薬剤生腸炎など)が否定できる場合に腸管型ベーチェット病と診断します。症状としては、腹痛、血便、下痢などがあります。潰瘍が深くなると、出血や穿孔を来たす頻度が高くなり、緊急手術が必要となる場合もあります。また術後の再発率が高く重篤な症状に至ることがあります。炎症を抑えて潰瘍病変を治療することが重要となります。

検査は?

 ベーチェット病の確定診断には、特異的な検査所見がなく、詳細な症状の経過についての問診が重要となります。また腸管型ベーチェット病に典型的な回盲部潰瘍を確認するためには、下部消化管内視鏡検査(いわゆる大腸カメラ)は必須となります。ベーチェット病では食道から直腸まで消化管全体にわたって潰瘍が生じる可能性があるため、当科ではベーチェット病が疑われる場合には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や小腸用カプセル内視鏡検査もあわせて行っております。

腸管病変の治療は?

 下記のような薬剤、栄養療法を用いた内科的治療を行います。内科的治療にもかかわらず、腸管が著しく狭くなる(狭窄)、潰瘍から腸管に穴が開く(穿孔)、膿がたまる(膿瘍形成)または大量出血をきたすような場合には外科的な手術が必要となります。現在、使用されている薬剤は以下の種類に分類されます。各治療法の詳細、選択方法については、担当医師にご相談ください。

■寛解導入療法 ・軽症から中等症:5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ®)、サラゾスルファピリジン (サラゾピリン®) ・難治性な場合:副腎皮質ステロイド(プレドニン®)あるいは抗TNF-α抗体製剤 (インフリキシマブ、アダリムマブ) ・副腎皮質ステロイド(プレドニン®)や抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ)による治療に抵抗、あるいは副腎皮質ステロイド(プレドニン®)漸減中に増悪した場合:免疫調節薬のアザチオプリン(イムラン®)の併用を考慮いたします。 ・経腸栄養療法 ・完全静脈栄養 ■維持療法 ・5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ®)、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®) ・アザチオプリン(イムラン®) ・抗TNF-α抗体製剤 (レミケード®、ヒュミラ®) ■外科的治療:腸管穿孔、大量出血は手術適応。 ■術後再発予防 ・5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ®)、アザチオプリン(イムラン®)、メトロニダゾール(フラジール®)などの薬物療法や経腸栄養療法の併用

担当医からの一言

適切な診断、治療により炎症を抑え続けることが重要です。お困りのことやご不明な点があれば遠慮なくご相談ください。


下部消化管内視鏡画像:ベーチェット病の腸管病変として典型的である境界明瞭な深掘れ潰瘍を回盲部に認めます。


<当科で診療することの多い消化器疾患について>