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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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家族性地中海熱

家族性地中海熱とは?

 家族性地中海熱は「遺伝性周期性発熱症候群」と呼ばれる自己炎症性疾患の一つです。MEFV遺伝子と呼ばれる遺伝子の異常が発症に関与し、発作性におこる発熱と腹痛、胸痛や関節痛などの症状を繰り返します。この病気は地中海沿岸域や中近東に多い疾患ですあり、2009年の全国調査で本邦でも約500名の患者さんが存在すると推定されておりました。しかし、疾患の認知度の高まりもあり、近年患者数は増加傾向にあります。また日本人患者さんにおいては必ずしも家系内発症を認めないケースもあります。

この病気ではどのような症状がおきますか?

 症状に個人差はありますが、発熱、腹膜炎、胸膜炎、関節炎などが繰り返すことが典型的です。この病気では消化管病変を伴うことは稀であるとされていましたが、近年、下痢や血便などの症状を呈し、潰瘍性大腸炎やクローン病との鑑別を要する症例の報告が増加しています。

この病気の治療法はなんですか?

 コルヒチンが家族性地中海熱に効果が認められている標準的な内服薬です。コルヒチンの内服療法は発作を予防し、アミロイドーシスという腎臓や腸管、皮膚、心臓などの臓器にアミロイドという特殊な蛋白質が沈着する病気の予防にもなります。コルヒチンの無効例や副作用のために使用できない場合では、抗IL-1製剤(カナキヌマブ、イラリス®)の導入が検討されます。

家族性地中海熱遺伝子関連腸炎とは?

 内視鏡検査や生検所見を含めた臨床像で確定診断が得られず、クローン病や潰瘍性大腸炎と確定できない腸炎は、 inflammatory bowel disease unclassified(IBDU)と称されます。IBDUは経過観察中にクローン病あるいは潰瘍性大腸炎いずれかの疾患に特徴的な所見を呈することが多いとされますが、確定診断が得られないまま経過する症例も存在します。この中には、MEFV遺伝子が関与して発症する、家族性地中海熱遺伝子関連腸炎が含まれている可能性があります。これらの疾患は炎症性腸疾患に対する従来の治療は無効か効果不十分な可能性がありますが、家族性地中海熱と同様にコルヒチンが有効であることが報告されています。治療に難渋するIBDU患者さんでは家族性地中海熱遺伝子関連腸炎かどうか診断することがコルヒチンによる治療を決めるうえで重要となります。当院では札幌医科大学と多施設共同研究を行い、IBDU症例に対するMEFV遺伝子解析を実施しています。

担当医からの一言

 家族性地中海熱に典型的な症状を認める症例はもちろん、従来の治療の有効性が乏しい非特異的な腸炎においても、MEFV遺伝子解析が治療法の決定に役立つ可能性があります。検査、治療法の詳細についてご質問があれば遠慮なくご相談下さい。




A. 家族性地中海熱遺伝子関連腸炎の大腸内視鏡検査所見(コルヒチン投与前)。
右側結腸に偽性ポリポーシス様の隆起が多発しています。


B. 家族性地中海熱遺伝子関連腸炎の大腸内視鏡検査所見(コルヒチン投与後)
コルヒチン投与後、偽性ポリポーシス様の隆起は消失しています。


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